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ハウス・オブ・カード 野望の階段


フランク・アンダーウッド試論


「ハウス・オブ・カード 野望の階段」

デビッド・フィンチャー

ケビン・スペイシー総指揮

プライムタイム・エミー賞受賞作品

2013年ー2016年


この作品は、ヒラリーが嫌われ、トラ

ンプが台頭してくる昨今のアメリカ政

治の舞台裏を本音の部分で語った政治

ドラマの傑作だ。なんと言っても、下

院院内幹事フランクを演じるケビン・

スペーシーの演技力が光る。野心家、

陰謀家、抜け目のないマキャベリスト

だが、同時に、貧困階層から這い上が

ったフランクは、一面、部下思いで、

義理人情に厚く、なんとも矛盾してい

るようだが、社会改革を志向し、高遠

な理想の持ち主でもある。しかし、す

べては冷徹な計算でしたたかに統御裏

打ちされ目的のためにはいかなる手段

をも選ばすどんな醜い汚い手練手管を

駆使してまでも政治的エゴの充足=食

物連鎖の頂点にたつべく「権力のため

の権力」を執念深く追求しようとする。


ドラマとは言え、その薄汚さの程度が

度外れている。だが同時に悪党の魅力

という側面はたしかにあり「本音だけ

で生きている人間」の爽快感を伴って

もいるのだ。ドラマの進行につれ「こ

いつ、なんて悪りぃ奴なんだ。とんで

もねぇ野郎だな」と思いつつ、周囲が

敵だらけの中、政治的難問を勇敢な体

当たり戦法で次々解決してまわる有能

かつ見事なフランクの手腕、その政治

力の発動に喝采を贈りたくなるのもま

た事実なのである。そこの部分が明ら

かにトランプと重なる。フランクの方

がはるかに有能だが。


優等生オバマにないものを野人トラン

プに見て期待値が上がる構造と、ドラ

マの中での、ウォーカー大統領とフラ

ンク下院院内幹事(のち副大統領を経て

大統領)の対比がまた二重に重なる。周

囲の意見に左右されやすく、優柔不断

で、日和見に走り易い、意見のブレが

あちこち目立つこのウォーカー大統領

は多分オバマの政治的漫画である可能

性が高い。手の混んだ陰謀家フランク

に較べると、ウォーカーのほうが善人

そうに見える。ところが、フランクに

は、彼のためなら命を賭しても惜しく

ない、絶対忠誠を誓う、強固な心酔者

がいる。日和見を繰り返し被暗示性の

高いウォーカーよりも、フランクの方

が貫禄とカリスマ性を備えた男性的指

導者と言えるだろう。


脇役たちの個性的演技も見事だ。例え

ばロビン・ライト演じるフランクの妻

クレア。一見エレガントだが旦那そっ

くりの野心的陰謀家で一癖も二癖もあ

りそう。あきらかに悪だくみの仲間か

つ共犯者である。ややゴシップめくが

ウォーカー前大統領夫妻の不和や仮面

夫婦ぶり、後にフランクとクレアの間

に生じた意思疎通上の不具合、機能不

全や電波障害などはひょっとして「現」

及び遠すぎない昔、歴代大統領の私生

活にまつわる実話を下敷きにしたかの

如きリアルさがある。


マハーシャリ・アリ演じるロビイスト、

レミー・ダントンとか、クリステン・

コノリーやモリー・パーカーの有する

女優としての魅力だとか、語りだすと

きりがない。


日本は同盟国として描かれ、東シナ海

の紛争も実話と見紛うかのリアリティ

で登場する。アメリカの敵として登場

し、金にものを言わせ、あこぎな政治

的裏工作に邁進する中国の悪役ぶりー

ーそれに伴う腹黒く不気味な役柄、憎

たらしい存在感は圧巻だ。(アメリカを

訪問した習近平が、その演説の中で冗

談めかして「ハウス・オブ・カード」

に触れたのは有名な話)


悪役といえばプーチンをモデルにした

とおぼしきロシアの大統領ペトロフも

またその怪物性と腹黒さでフランクと

競合する。元KGB将校という設定で離

婚歴があり、ずば抜けて頭が切れ、心

理戦に長けており、有能だが、何を考

えているのかさっばり解らぬまるで信

用できない怪物として描かれている。

アメリカ人から見たロシアの現権力が

一体どう見えているかうかがえて興味

深い。同時に、アメリカ人の価値観か

らは、哲学者井筒俊彦みたいな世界観

=ロシアやイスラムの有する魂の深淵

は容易に理解できないということが明

らかだろう。


清濁合わせ持ち、非道徳的でアンチク

リスト的側面すら有するダークヒーロ

ーとしてのフランク大統領がなぜ描か

れる必要があったのか、作者は一体全

体何を訴えたかったのか、その制作意

図というか本音の部分が徐々に明らか

になってくるのが第4シーズンである。


ここではISをモデルにしたとおぼしき

イスラム原理主義のテロリストが登場

する。これから見る人のため、ネタば

れになるので詳細は省略するが、要す

るに昨今の過酷な政治的現実に対処し、

強敵たちと喰うか喰われるかの殲滅戦

を貫徹するためには、フランク大統領

くらいのタフネスさ、強引さ、腹黒さ、

敢闘精神、手の込んだ権謀術数や剛腕

がなければ絶対に勝ち抜けない。結果

が出せない、きれいごとだらけの柔な

政治家などもううんざりだ、敵と互角

に渡りあえ、敵を打ち倒し、アメリカ

に勝利をもたらしてくれるならフラン

クだっていいじゃないか。否むしろ彼

みたいな妥協なき強いタフネスこそが

求められているのだというアメリカ人

多数派の本音の本音がこのあたりに露

呈してくる。真実を追求する勇気ある

報道と国家の安全保障のどちらが大事

なのか。大マスコミ様の清く正しく美

しい言論言説の一体何がどこが偉いの

か。そんなことよりも早く俺たちに飯

を食わせてくれ。大衆に愛されること

と政治的大義が両立しないならば、迷

いなく前者を削除すべきである。テロ

リストにはテロリズムで断固応酬すべ

きではないか。怪物に対してはさらな

る怪物で対処せねば・・・・等々・・

・決断力なきオバマ政権に疲れ、飽き

果てた人たちの心理的反動・フラスト

レーションがそこにあり、怪物待望論

みたいな危険性すらも内包する。


お察しのとうり昨今のアメリカ人は疲

れ果て摺り切れ、崖っぷちに立たされ

ていて余裕がなくなっている。この作

品はそういう崖っぷちに立たされた人

たちの心に染み入るドラマなのである。


さて蛇足を少々。ドラマの随所に出て

くるマッキントッシュのMacBookPro

やIphoneは何て美しいのだろう。Ma

cのファンである私が思わずニンマリ

する場面はいたるところに存在する。

キャノンやソニーのデジカメがドラマ

チックな場面で大活躍する。日本車の

快適さは、アメリカとロシアの大統領

どうしのトゲトゲしい攻撃的会話の中

ですら絶賛される。大統領専用機エア

フォースワンの機内インテリアは「空

飛ぶ大統領執務室兼応接室」とも言う

べく何とも豪華。あんなところで暮れ

行く夕雲や連なる白銀の山脈や雄大な

オーロラを眺めつつ、大統領や側近た

ちと政治的意見や冗談を交わし合い、

シャンパンで乾杯の上、ロブスターを

ぱくついてみたいものだ。


対極にある、貧困層の日常生活の活写

も優れている。下町の貧困街にあるス

ペアリブの店主フレディ・ヘイズとフ

ランクとの交流がまたユニークだ。フ

レディのスペアリブを食べそこでフレ

ディと会話することがフランクの密か

な楽しみ。自身貧困層から立ち上がっ

たフランクは、フレディの狭い店が大

好きである。権力に一切媚びることな

きフレディは、一本筋の通った下町の

オヤジで、黒人で、前科者である。教

養もなく素朴だが時に苦労人特有の体

験知から演繹された独自の鋭い観察的

意見をフランクに浴びせかける。


フレディにとってのフランクは、自分

が作ったスベアリブを食べてくれる単

なる客に過ぎない。お互い強い個性故、

のちに大喧嘩となってしまうのだが、

高級インテリ種族よりかはこの種の場

所や人物に義理や愛着・郷愁を感じる

フランクは腹黒い大物政治家とはいえ、

教養俗物の類や鼻もちならないブルジ

ョアとは対極に位置する存在だとーー

少なくともはーー言えるだろう。


愛される人間とは到底言えない。しか

し、所詮、政治家など、上辺はきれい

ごとだらけ、結局は同類異種の政治的

偽善的ペテン師にちがいない中でなら、

フランクははるかにマシな人間ではな

いか。


本音まる出しのこのドラマを見て多分

大勢のアメリカ人がそう感じたことだ

ろう。どこかに密かにこの種の人物へ

の強い待望論がある。目的は手段を正

当化するという毒薬めいた考え方が密

かに混入してきている。ひょっとして

新種のアメリカ帝国主義の卵かもしれ

ず、たしかに危険だ。フランクはまだ

出てきていないのである。


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